クリティカル・シンキング/みんなの意見 7月の回答選と解説

中3
中3 3月(CLT3L1)
『清談 佛々堂先生』からの出題

今回の課題

今回のクリティカル・シンキングは以下のような課題だった。

千紗子の独白(58〜60行目)にあるように、自分を成長させるために、自分が最も得意とすることを封印するということについて、あなたの体験を二文程度で簡潔にまとめなさい。

それでは、みなさんが送ってきてくれた回答から、目を引いたものを紹介していこう。

今回の回答選

苺白米さん

私はバスケットボール部で先生に「右手でドリブルをせずに左手だけでドリブルをしなさい。」と言われました。右手でのドリブルは得意ですが、あえてそれを封印することにより、左手でのドリブルをより上達させることができるんだなと感じました。

 

同じ事例をkareanさん、はちみつカルピスさんが取り上げていた。バスケをしている人にとって、これはよく知られている体験なのだろう。身体に関わる能力を「封印」することは文字通り“身にしみる”ものなのだ。

幸之助@サッカーさん

サッカーで、左足でボールを操れるようになるために、利き足を封印した事がある。自分の得意なことを封印し、自分を成長させるということは、初心に返るということであり、自分の長所を増やすということでもあると思う。

 

これも身体的な体験を事例として取り上げたもの。「自分を成長させるということは、初心に返るということ」という気づきが鋭く、目を引いた。

もるちゃんさん

私は部活のソフトテニスで前後にコントロールし、相手のミスを誘うのが得意だった。しかしそれだけでは、試合で勝ち進んでいくことができなかった。違う戦略で戦うのは難しかったけど、おかげで様々な攻撃ができるようになった。

 

部活という事例の中でも、勝ち負けが明確になる「試合」を取り上げているところに説得力があった。

N.I.さん

将棋で親に教えてもらった思い出のある守り方を、そのやり方では勝てない相手が出てきたので守り方を変えて練習してみた。結果、とても不安だったが上手くできてその相手にも勝つことができた。

 

これも同じように勝負という状況を取り上げている。もるちゃんさんの事例と同様、“これまでのやり方では勝てない”ということに気づいたときにこそ、それまでの得意技を「封印する」ことが大きな意味をもつ。

トンボのおじさんさん

テニスのレッスンの最後にある試合で、自分よりも実力が違う人(自分よりも実力が下の人)とたたかう時に得意なフォアハンドを封印して苦手なバックハンドだけで球を打った。試合には負けたがバックハンドへの自信がついた。

 

自分自身が「封印」したことの意味を納得していれば、たとえ勝負に負けても自信をつけることにつながる、というところまで深められている点が秀逸。

ゆうとさん

僕は自分の得意技しか使わず、その他の技も学ぼうと得意技を禁止した。しかし、全く一本がとれず結局得意技に甘んじてしまった。

 

現実は「封印することで成長した」というサクセス・ストーリーだけではないはず。勝負を決めるという抜き差しならない状況で、「自分の得意技にすがりたい」という気持ちになることは誰にでもあると思う。この「甘んじて」しまう気持ちを掘り下げると更に考察が深まるだろう。

Z会のつぶやき

 

通常、「最も得意とすること」はその人のプライド(自尊心)につながる。勝負の事例が数多く取り上げられていたのは、負ければプライドが傷つくということがわかりやすいからだろう。だからこそ、「自分が最も得意とすること」をあえて「封印する」ことは、並大抵の覚悟ではできないはずだ。このことを自分の立場に置き換えて考えてみてほしい。
紹介した回答の他にも、さまざまな体験が寄せられてきて非常に興味深かった。だが、なかには課題で求められていることが十分理解できていない回答も見受けられた。
まず、「好きなこと」と「得意なこと」とは違う。例えば「テストでがんばるためにゲームを我慢した」といった事例は、「自分の好きなことを我慢した」体験であり「最も得意なことを封印した」体験ではない。また、「ケガをして得意なことができず悔しかった」といった事例も、「封印する」という“あえて自ら選ぶ”ところが見受けられない。クリティカル・シンキングに正解はないが、求められているポイントは外さないように注意しよう。
次回もみなさんからの鋭い回答を待っている。