クリティカル・シンキング/みんなの意見 11月の回答選と解説

中2
中2 11月(CLT2G1)
『カタコトのうわごと』からの出題

今回の課題

今回のクリティカル・シンキングは以下のような課題だった。

筆者が取り上げた「ふと」や「思わず」のような、日頃頻繁に発していながら、他の表現に言い換えることが難しいとあなたが考える言葉を一つ取り上げなさい。また、取り上げた言葉について、どんな時に使うか、第三段落一文目の筆者の「ふと」の説明を参考にして書きなさい。全体を二〜三文程度にまとめること。

今回は、〈よく使う言葉でありながら、他の表現に置き換えるのが難しい言葉〉について考えてみるというお題だった。
これまでの中でもかなり難しい部類に入る課題であり、書きながらいろいろ思考をめぐらしてみたことがうかがえる回答が多く見られた。
それではZ会に届いた回答から、目を引いたものを紹介していこう。

今回の回答選

牛若丸さん

僕は「なんとなく」が当てはまると思う。「なんとなく」という言葉は、何か確実な根拠・理由が分からず、直感的な感覚が気持ちや行動に表れたときに使う。だから、「なんとなく〜なんだよね。」と言われたとき、「あー、なんとなくね。」と返せるのは、普段は自分も直感的な感覚を実感しているからだろう。これほど身近で、自分の感情を曖昧でも伝えることができる言葉は他にないのではないか。

 

最初に紹介するのは、牛若丸さんの回答。とりあげた言葉について丁寧な説明を述べてくれた。「なんとなく」は論理よりも主観を伝える言葉だと言えるが、そのような言葉が伝えるものを人と共有できる理由について「自分も直感的な感覚を実感しているから」と言及できている点が非常に優れている。

ニッケルさん

私はコッテリに相当する他の言葉が無いと思う。確かに「濃厚な」などが有るが、あの塩辛い様な、油がみなぎっている様な感覚は出ない。逆に「濃厚な」もコッテリとは表せない。あの上品な感覚はコッテリには無い。

 

擬態語(物事の様子を音で表したもの)の一つである「コッテリ」をあげてくれたのはニッケルさん。「あの塩辛い様な、油がみなぎっている様な感覚」という説明は、具体性があって非常に秀逸。日本語は他の言語と比較して擬態語が多く、特に食べ物に関する語には独特のものが多いそうだ。いろいろな擬態語にニッケルさんのような説明を考えてみたらおもしろいのではないだろうか。

しゅーくりーむさん

「よろしくお願いします」という挨拶は、これから誰かにお世話になるときによく使われる。しかし、英語には直接の訳語が無く、初めて海外の学校に入学したとき、先生になんと挨拶すべきか迷ったのを今でも覚えている。それから一年経った現在は、初めて会った人に英語でよく使われるフレーズ、「Nice to meet you」を代用している。

 

英語に置き換えにくい言葉をとりあげてくれたのは、しゅーくりーむさん。指摘してくれたように、日本人は〈これからお世話になる〉と考えて、初めて会う人に「よろしくお願いします」と挨拶するが、海外ではそのような挨拶をすることはあまりない。日本語から直訳できる言葉がないとき、背景にある考え方の違いも考えてみると興味深いだろう。

RURIHAさん

私は「いただきます」という言葉は他の言語に訳す事が難しいと思います。「いただきます」という言葉は、食べ物を食べる時に、その食べ物の材料の命をいただく事への感謝や、つくってくれた方への感謝の気持ちを込めて使います。外国にも食事の前に使う言葉はありますが、それは神への感謝の言葉なので「いただきます」とは違う意味になってしまいます。

 

外国語に訳しづらい言葉をとりあげてくれた回答からもう一つ。RURIHAさんの回答は、日本語の「いただきます」がもつ意味合いと、外国語の食事の前に使う言葉の意味合いとの違いが丁寧に説明されていて、たいへんすばらしい。このような言葉をたくさん集めて、言語ごとに意味や背景を比較してみたら非常におもしろいだろう。

Z会のつぶやき

 

今回の課題は、日常的に使っている言葉についてじっくりと見直してみる、という内容のものであった。課題が求める言葉を考えたうえで、その言葉の説明も自分なりの表現で行わなければならないため、手間のかかるものだったのではないかと思う。単に辞書的な意味を書くのではなく、その言葉を使う具体的な場面を思いうかべて説明するので、いつもよりもさらに一歩進んだ深い思考が必要な課題であった。寄せられたどの回答も、とりあげた言葉の説明に丁寧な思考のあとが見られ、皆さんの努力に感心させられた。
ところでみなさんは、『舟を編む』(三浦しをん著)という小説を読んだことがあるだろうか。今回の課題は、この小説の主人公である辞書編集者の仕事にちょっと通じるものがあった。映画化もされた作品であり、機会があったらぜひ手にとってみてほしい。言葉の用法について考えてみるのは、思考力を鍛える手軽な方法なので、時にはこの小説の主人公をまねて試してみるとよいだろう。

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今回の講評はここまで。中2クリティカル・シンキングは、次回1月度が今年度最後の公募。あなたの投稿を楽しみにしている。