クリティカル・シンキング/みんなの意見 9月の回答選と解説

中2
中2 9月(CLT2E1)
 『平家物語』からの出題

今回の課題

今回のクリティカル・シンキングは以下のような課題だった。

問題文の中で重盛が引用している言葉の類語に「賞は厚くし罪は薄くすべし(=よいことをしたときはできるだけ褒美を手厚くし、悪いことをしたときはできるだけ罰を軽くしたほうがよい)」というものがあります。あなたはこの言葉に賛成ですか、反対ですか。賛成か反対かを示した上で、賛成する理由、もしくは反対する理由を書きなさい。全体を二〜三文程度にまとめること。

今回は、賛成か反対か、自分の立場を決めて意見を述べるという、いわゆる“ディベート型”のお題だった。
それぞれの立場で考えられた、熱い意見が多く寄せられ、興味深く読むことができた。
それではZ会に届いた回答から、目を引いたものを紹介していこう。

今回の回答選

てるんさん

僕はその言葉に反対です。悪いことをやったかどうか疑わしいときなら罪は軽くしてもいいと思います。ですが、悪いことをやってしまったのなら、罪は重くしないと、また悪いことをしてしまうと思います。なので、僕はその言葉に反対です。

 

反対を選んだ人の意見で多かったのは、「悪いことをしたときはできるだけ罰を軽くしたほうがよい」という考え方に賛同できないとしたもの。てるんさんの回答は、反対であることを示した上で、罰を軽くした場合の問題点を明確に述べられている点がよい。趙雲くんさんくまのジャッキーさんコルビージャックさんサーモンさんも同様の意見を寄せてくれた。

チェリーさん

私はこの言葉に反対です。良いことをした時に褒美が多いなら、そのために良いことをしようと考える人が増えると思います。しかし、悪いことをしたときに受ける罰があまりに軽いと、「これくらいなら悪いことをしたって問題ない」と言い悪いことをする人が、少数だとしても生まれてきてしまうと思うので、適度に重くする方が社会が成り立ちやすいのではないかと考えました。

 

「罪は薄くすべし」への反対意見を述べた回答からもう一つ紹介しよう。〈悪事を軽くとらえる人が出てきてしまう〉というチェリーさんの指摘には、なるほどと思わされた。人間の心理に思いをめぐらすことができた点で優れた回答だと思う。

ゆでたまごさん

わたしは反対です。なぜなら、甘えてしまうからです。褒美が良いのに悪いことには軽い罪というのは、私だったら自分に甘やかしてしまいます。達成感を味わえるように褒美は大きいほうがいいですが、悪いことをしたら反省するために罪が大きいほうがいいと私は考えます。

 

人の心理に着目した回答からもう一つ。罰の意義について〈自分を甘やかさず、しっかり反省する〉ためと述べたゆでたまごさんの回答からは、ご本人の謙虚でしっかりした人柄がうかがえる。

ラスカル大好きさん

僕は、その言葉に賛成します。なぜなら、良いことをしたときは褒美を厚くすることが、やる気に繋がると思っているからです。また、悪いことをしたときは重い罪で「その行いが良くないことを知らしめる」としても良いと思いますが、僕は、罰を軽くして注意をし、「もう一度その人にチャンスを与える」という方法の方が良いと思ったからです。

 

ここからは賛成の立場を選んだ人の中から回答を紹介しよう。「もう一度チャンスを」というラスカル大好きさんの回答は、とくにみなさんのような成長の過程にある人たちにあてはまるものではないかと思う。われわれ大人の立場にある者は、しっかりと心にとめておきたい指摘である。S.Rさんも同様の意見を寄せてくれた。

Y.H.さん

私は賛成です。良いことをした時は手厚い褒美が貰えるので、また頑張ろうというモチベーションに繋がります。そして、悪いことをしてしまった時は刑を軽くしてもらったことに対して感謝と反省して二度と犯さないように改心できるからです。

 

Y.H.さんの回答は、褒美を厚くし罪を軽くすることそれぞれのメリットについて具体的に述べられている。また、褒美や罰を与える側と受ける側の人間的なつながりついて言及できた点も光っている。

A.N.さん

賛成です。良いことをすることは簡単ではないので褒美を手厚くする価値があります。悪いことをしたときは本人も後悔や反省、自分自身への怒りで苦しんでいるので、罰をそれ以上重くするよりも次に悪いことをしないようにする方が大切だと思います。

 

賛成の立場を選んだ回答からもう一つ。A.N.さんも、褒美を厚くすることのメリットと罰を重くすることのデメリットについてくわしく説明できている。とくに〈良いことをすることは簡単ではない〉〈悪いことをした本人も苦しんでいる〉という指摘にははっとさせられた。洞察力のある意見だと思う。

Z会のつぶやき

 

今回は、賛成・反対、どちらかの立場を選んで意見を書くという課題に取り組んでもらった。このようなディベート型の課題は、高校入試の作文問題でもよく出題されている。そこで今回は、ディベート型の作文のコツについてふれておこう。まず大事なのは、必ずどちらかの立場を選ぶ、ということ(立場を選んで書く課題で「どちらでもよい」と答えるのはよくない)。その際、賛成・反対を含めてできるだけ多くの意見や観点を考え、説得力のある説明のできるほうを選ぼう。次に大切なのは、他の人も納得できるような理由を盛りこむ、ということ。自分が選んだ立場があてはまる具体的なケースを思い浮かべ、そのケースからどのようなことが読み取れるかを考えて文章にまとめよう。
今回の課題では、多くの人が自分の立場とその理由を示すことができていた。時間のあるときなどに「自分と異なる立場を選んだ人はどのように考えるだろうか」ということに思いをめぐらせてみてはどうだろうか。いくつかの観点をもつことで、自分の意見をより明確に、深いものにすることができるだろう。

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今回の講評はここまで。中2クリティカル・シンキングの次回の回答の公募は、11月度を予定。あなたの投稿を楽しみにしている。