クリティカル・シンキング/みんなの意見 7月の回答選と解説

中2
中2 6月(CLT2C1)
 『ハードボイルドに生きるのだ』からの出題

今回の課題

今回のクリティカル・シンキングは以下のような課題だった。

筆者は「数字に対する感じ方は人それぞれなのだ」と述べています。問題文の例を参考にしながら、「同じ数値に対して自分と他人との感覚にズレが生じた」経験を一つあげなさい。全体を二文程度でまとめること。

たくさんの投稿をありがとう。今回は〈同じ数値に対して自分と他人とで感じ方に違いが生じた経験〉を書くというお題だったが、みなさんの日常生活のひとこまがかいま見える興味深い回答がたくさん寄せられた。
Z会にとどいた回答から、目を引いたものを紹介していこう。

今回の回答選

十時に最寄り駅三番線さん

珠算(そろばん)の問題で、上級者の人が「2問も間違えた?」と言っていると、初・中級者の人が「え?2問しか間違えてないなら凄いやん」と、その人に言っていました。技術や力量によって、ミスした箇所が同じ数でも、多いと感じるか少ないと感じるかは人それぞれだということを、その時感じました。

 

テストの点数や試験の出来について取り上げた回答がたいへん多かった。中学生である皆さんにとって、非常に身近な事柄だからだろう。十時に最寄り駅三番線さんは、感じ方の違いが生じる理由を「技術や力量」によると考察を述べてくれた点が光っていた。皆さん、他の人の出来はもちろん気になると思うが、自分が納得できる結果をめざそう。

Wild and coolさん

テレビの天気予報を見ているとき、「今日の降水確率は、30%です。」と気象予報士の人が言いました。僕は「傘はいらないか」と呟いたところ、いつも用心深い父は、「一応持っていけば?」と言います。弟と母は、「いらないでしょ!」と言います。結局、面倒だったので持っていきませんでしたが、数値の価値観は、人それぞれだと感じました。

 

天気予報の降水確率について取り上げてくれたのは、Wild and coolさん。30%という確率はさまざまな観測データをもとに算出した数字だと思われるが、それを高いととるか低いととるか、そしてどんな行動を選択するか。結局は一人ひとりの考え方にかかっているのだと、あらためて実感させられる回答である。

なあささん

友達と出かけた日、ショッピングモールの壁に「抽選500名様にプレゼント!」と書いてある広告を見ました。私は500名もと思いましたが友達は「500名しか当たらないんだから当てるのは難しいよね」と言っていて、感覚のズレが生じていることが分かりました。

 

「500名」を多いととるか、少ないととるか、友人の方と対照的な感じ方をあげてくれたのはなあささん。500名の当選に対してどれくらいの応募があると見るかによるものと思われるが、当たる確率に対する感じ方のちがいもあるのではないか(例えば10%を高いととるか低いととるか)と思うと、これもまたおもしろい。

かえるさん

私は学校の部活動で卓球部に所属しているが、ある大会の決勝であたった相手に一セット目を十三対十一でとられてしまった。試合を見ていた友達には「あと二点で追いつけたのに、惜しかったね。」と言われたが、私はあの二点は追いつくことのできない力の差だと感じた。

 

スポーツやゲームの得点差に対する感じ方も、人による違いが出やすいもの。かえるさんが指摘してくれたように、立場や状況によって変わるというのも興味深いものである。この場合、実際に試合でプレーをしているかえるさん本人が、より強く力の差を感じているという点に心をひかれた。

ひめさん

テストへの日にちがあと5日だったとき。友達が「テストまであと5日しかない!」と言っていたが、私は「え、まだ5日もあるじゃん。」と思っていた。このとき自分と他人との感覚が違うのだな、と思った。

 

時間に関する感じ方の違いをあげてくれた回答も比較的多かった。ひめさんのように、「まだ〇〇もある」と考えるか、「〇〇しかない」と考えるか。時と場合にもよるけれど、残された時間を最大限に生かす方向で、前向きに考えるのがいちばんよいのではないかと思う。

長岡恭史の妻さん

僕は数学が好きで、友達には数学の嫌いな人がいます。僕は数学の時間はいつも短く感じられますが僕の友達は「数学の時間はゆううつすぎて一時間が三時間ぐらいに感じられるなぁ」とよく言います。同じ数字、時間でもそれをどう捉えるかは人によって違うのだと思いました。

 

最後に時間に着目したものからもう一つ。同じことをしている時間でも、楽しいと感じられる人もいれば辛く感じる人もいる。長岡恭史の妻さんは本当に数学が好きで、時間が過ぎてゆくのを忘れてしまうほどなのだろう。集中していて「あっという間に過ぎた」と感じられた時間は、あとで振り返ってみるとむしろ強く印象に残る時間として記憶されるのだそうだ。

Z会のつぶやき

 

今回は〈他者との感じ方の違い〉をテーマにしたお題であった。回答は大きく分けて、テストの点数やスポーツの記録など〈一人ひとり目標や得意不得意があるもの〉、必要な数量など〈その人が置かれた立場や状況によって変わるもの〉、時間感覚など〈個々人の性格・好みや文化的な違いによるもの〉などが多く寄せられた。また、同じ情報を受け取っても、それをもとに選択する行動が人によって正反対になるなど、なぜそうなるのか、あらためて興味深いと感じさせられるものがあった。
数字というはっきりしたもので示されたもので、自分と人とで感じ方に違いがあると感じた場合は、その違いの理由はどこにあるのか、ちょっと考えてみるとよいだろう。相手の価値観(その人の生き方においてどんなことに重きを置いているか、といったことなど)や、これまでの経験、好きなこと嫌いなことなどが見えてきて、相手に対する理解が深まるきっかけになるかもしれない。クリティカル・シンキングを日常の中にも取り入れてもらえたら幸いである。

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今回の講評はここまで。中2クリティカル・シンキングの次回の回答の公募は、9月度を予定。あなたの投稿を楽しみにしている。