クリティカル・シンキング/みんなの意見 7月の回答選と解説

中1
中1 3月(CLT1L1)
『植物はすごい』からの出題

今回の課題

今回のクリティカル・シンキングは以下のような課題だった。

植物たちの宿命(16〜17行目)に対し、動物である人間にとって「逃れることのできない宿命」とはどのようなことだと思いますか。二文程度で考えを述べなさい。

それでは、みなさんが送ってきてくれた回答から、目を引いたものを紹介していこう。

今回の回答選

can changさん

動物である人間にとって「逃れることのできない宿命」とは、他の命をいただくことでしか生きられないことだと思います。

 

問題文をしっかり読みこめば、このような回答を導き出すことができるだろう。植物の宿命は裏を返すと人間を含む動物の宿命でもあるからだ。can changさんを始め、ペンギン隊長さん、C.�T.さん、S.F.さんらがこの事例を取り上げていた。

ピースケさん

いつか必ず誰でも死ぬということ。ただ、これは全ての動物に当てはまる。

 

キリン虫さん、荻さんさん、アレンさん、しゅりんさん、にこりんさん、その他大勢の人が「死」を人間の宿命であると考えた。この意見には誰も異論がないだろう。ただしピースケさんが「ただ、これは全ての動物に当てはまる」と付け加えているように、確かに人間に限ったことではない。ここから一歩抜き出る方法を探ってみよう。

さくらんぼさん

大切な人が天国に行ってしまうこと。

 

「『死』から逃れられない」という言い方が冷静で客観的であるのに対し、同じことを言っているさくらんぼさんの回答は、「死」が生きている人間に与える意味をうまく言い表していると思う。そのことに自覚的であるならば、もう一文付け足して示すと、なおよし。

☆NAO☆さん

私は 自然などの災害が 人間にとって逃れることのできない宿命だと思います。東日本大震災で多くの人が亡くなり 自然の怖さを感じました。 突然起き一瞬にして何万人もの命が消えてしまったからです。しかし 、この宿命で 命の大切さを感じると思います。

 

「死」に次いで多くの人が取り上げていたのがこの事例。さちこさん、銀時さん、ミッツマングローブ ドナルドダック3さん、平ジャン中島君ラブさん、さくらさんら多数の人が取り上げていたが、☆NAO☆さんは自分なりに取り上げた理由を説明していた点が目を引いた。

さなりおさん

「人間の宿命」とは、高等なことを考えて学ぶことだと思います。日常生活の中での学習は、種の存続のために動植物でもやっていたから、進化してきたのだと思いますが、人間はそれ以上に高等なこと、例えば、学校などで難しいことを考えたり、新しいことを学ぶことに日々挑戦し、切磋琢磨したりすることが宿命だと思います。

 

他にもK.S.さん、M.O.さんなどが、「思考する」という人間の特質に目を向けていた。これがさなりおさんの言うように「日々挑戦し、切磋琢磨する」ことへ結びつき、M.O.さんは、それゆえ人間は「進化」としたと言う。さらに考察を進めてみよう。この宿命は人間を幸せにするのだろうか?

アポヤンさん

嘘をつく事。 自分のためでも、人のためでも、嘘は、誰しも一回はつかなきゃいけない時がくると思う。

 

これも言葉をもつ人間ならではの特質である。ありふれたことの中にひそんでいる人間らしさに目を向け、それを宿命ととらえた感性に脱帽。

R.U.さん

人間が逃れることのできない宿命は、「人間関係」だと思う。「人間関係」は、めんどうくさいや、疲れる、もう関わりたくないと思っても生きている間は、ずっとあるからだ。

 

夏目漱石の『草枕』の冒頭を思わせるような内容だ。このわずらわしさからどうすれば逃れることができるか? というのは現代まで続いている近代小説の大きなテーマである。

Z会のつぶやき

 

正解のない問に多くの人が取り組んでくれて、とても嬉しい。初回なので、「正解がない問」への取り組み方を紹介しておこう。

(1)自分がその回答を取り上げた理由を説明しよう。例えば、今回「死」を取り上げた回答は200近くあった。それだけ思いつきやすい「宿命」の事例なのだが、そう考えた理由やきっかけは人それぞれ異なるはず。だからこそ、そこに自分の考察のオリジナリティ=個性がでる。逆に「どうしてそれが宿命なの?」と思うような個性的な事例も見受けたが、そのような場合にも理由は欠かせない。大喜利(おおぎり)風に言えば「人間の宿命とかけまして、A(事例)と解きます。その心はB(理由)なのです」となるのだから、オチのB(理由)で読み手に「なるほど!」と思わせることが大切だ。

(2)他者の回答をよく読み、自分の回答を見直そう。正解のない問いに答える力を鍛えるには、講評で取り上げられていた他の人の回答をよく読むことが何より勉強になる。着眼点、説明の仕方、表現など、良いところを見つけ出して、どんどん自分の回答に取り入れていこう。ただし、核になる「自分の考え」を安易に捨てたりしないこと。クリティカル・シンキングに誤答はない。だから自分の考えに自信をもち、その考えをより魅力的に、そして誤解なく伝えられるように工夫すること。他の人の回答やZ会のコメントは、自分の考えを変えるためではなく、自分の考えをうまく伝えるための参考にしてほしい。