クリティカル・シンキング/みんなの意見 9月の回答選と解説

中1
中1 9月(CLT1E1)
 『韓非子』からの出題

今回の課題

今回のクリティカル・シンキングは以下のような課題だった。

あなたが「矛盾」を感じた物事・できごとについて、矛盾点がどこかわかるように、三文程度で説明しなさい。

たくさんの投稿をありがとう。まずは復習として「矛盾」という言葉の意味をおさえておこう。

*矛盾=つじつまが合わないこと。二つのことが同時に成り立たないこと。

今回の問題文には、「どんなものでも突(つ)き通せる矛(ほこ)」と「どんなものを使っても突き通せない盾(たて)」が登場した。この二つのものが同時に存在するはずはなく、「矛盾」という言葉につながった。今回の「クリティカル・シンキング」では、問題文から「矛盾」という言葉の意味を正しく読み取ったうえで、自分自身が「矛盾」を感じた物事・できごとについて説明することが求められている。
それでは、みなさんが送ってきてくれた回答の中から、目を引いたものを紹介していこう。

今回の回答選

菜々っぴ姫さん

街中の小さな警察の物置に、貼り紙がしてあった。その貼り紙には、「貼紙禁止」と書いてあった。私は、この「貼紙禁止」の貼り紙に矛盾を感じた。

 

これぞ矛盾!という印象を与える貼り紙だ。「貼り紙禁止」だということを、貼り紙以外の方法で示すことができなかったのだろうが、こういう場合、「無許可の貼り紙禁止」などの表現になっていれば、矛盾を感じさせずに済んだだろう。 あやちゃさんも、同じく「貼り紙禁止の貼り紙」を挙げてくれていた。

ドクターストレンジさん

私が矛盾を感じたのは、学校の先生の言葉だ。その先生は私たちに「絶対なんて絶対にない!」とおっしゃった。当時小学5年生の私にも明らかにわかるくらいに矛盾していた。

 

先生の言いたいことはわかるけどつじつまが合わないぞ? と思わせる発言。「絶対に」という言葉は、〈決して〉という意味の副詞として使われていて、「絶対」とは別の言葉だ、と文法的に見れば、実は矛盾した発言ではないのだが、聞く側が矛盾と感じても無理はない。とっさの判断で適切な言葉を選ばなければいけないから、話し言葉というのは本当に難しい。

ビビさん

母は「自分の部屋、片付けんさい」と言うくせに母の寝室も私の部屋に負けないくらいのレベル。「母さんも片付けたら?」と母に言ってみると、母は「お母さんは、ええんよ」と。…え?

 

言っていることとやっていることが違う、というもの。このように、親子間で感じる矛盾について説明してくれた人はとても多かった。ビビさんのお母さんは、これから大人になるわが子のために良かれと思って、片付けの習慣をつけてあげようとしているのだろう。親というのは、たとえそれが自分も苦手なことであっても、子どもには克服させてあげたいと思うものだ。それが、えてして親子げんかの種になってしまうのだが…。

K.M.さん

親に「友達も持っているから」と物をねだったら、『よそはよそ、うちはうち!』と断られてしまった。別の日、Yちゃんがテストでいい点数をとったら、『Yちゃんみたいに頑張りなさい』と言われた。なんだ、よそはよそ、うちはうちじゃなかったのか?

 

親子関係に関して、K.M.さんのように、「よそはよそ、うちはうち」という決まり文句について取り上げてくれた人も多かった。この答案に共感する人は少なくないのではないだろうか。この講評を書いている私も、中学生の頃、これが原因でどれだけ親子げんかをしたかわからない。大人になった今は親の気持ちもわかるが、それを子どもが納得できるように説明するのはとても難しいのだ。きっとこの矛盾はなくならないし、これからも親子げんかの種として生き続けるだろう。

S.A.さん

今のコロナ状況で、政治家がマスクを着用しての外出や、ソーシャルディスタンスを保っての生活を要請している。しかし、その要請する政治家たち本人はマスクを着けずに会議を行い話し合いをしている。それは、ソーシャルディスタンスが保てていると言えるのだろうか?

 

コロナ禍における政治家の言動の矛盾について指摘してくれたのは、S.A.さん。ほかにも、コロナ禍のもとで見聞きしたことを取り上げてくれた人は多かった。新型コロナは未知のウィルスで、過去の経験に基づくノウハウが世界中のどこにもなく、すべての対応が手探りとなるため、矛盾と感じられることがらも、どうしても発生してしまう。不安やあせりに振り回されすぎず、自分にできることを着実に積み重ねて、みんなでこの混乱を乗り越えていこう。

Z会のつぶやき

 

●「矛盾」を抱えて生きる
私たちは生きており、毎日さまざまな出来事に出会い、さまざまな考えや感情が次々に(また、同時に)生まれては移り変わっていくような毎日を送っている。だから、〈論理的には同時に成り立たないはずの考えや感情が、同時に存在している〉というのは、ある意味当然とも言える。

●「矛盾」を読み解く
そうした複雑な「自分」や「他人」を理解しようとするなら、「矛盾」の発見は一つの糸口になる。何らかの「矛盾」を発見したときには、「どうしてそうした矛盾が生じたのか」「そうした矛盾について、自分自身はどう思うのか」などについて考えることを大切にしてほしい。
情報の伝達ミスや思い違い、考えが練れていなかったことが原因で、「矛盾」が生じることもあるだろう。あるいは、一見すると「矛盾」しているようだけれども、特定の「条件」「状況」「知識」「経験」「ものの見方」からとらえ直してみると実は「矛盾」ではなかった、というような発見をすることもあるかもしれない。
さらに言うと、解消することの難しい「矛盾」、前提として受け入れたうえで、そこから先どのように行動するべきかを考えていくような「矛盾」もある。

●「矛盾」はチャンス
「矛盾」を発見することは、今まで触れたことのなかった新しい考え方を知り、それについて自分自身でも考えていくための、きっかけになると思う。「矛盾」に気づいたら、その「矛盾」について考えてみよう。「矛盾」について考えることは、自分の考えを更新(こうしん)したり、新しいものの見方を手に入れたりすることにつながるはずである。
みなさんのすばらしい観察眼、発想力、そして自分の考えも他者の考えもいったんは受け止めてみようとする広い心を、これからも大切にしてほしい。

◇◆◇

今回の講評はここまで。中1クリティカル・シンキングの次回の回答の公募は、11月度を予定。あなたの投稿を楽しみにしている。