クリティカル・シンキング/みんなの意見 7月の回答選と解説

中2
中2 1月(BLT2H2)
『鷹のように帆をあげて』からの出題

今回の課題

今回のクリティカル・シンキングは以下のような課題だった。

平橋さんの言葉を聞いて、モコに対する理央の気持ちが変化しています。このように、誰かの言葉によってあなたの気持ちや考えが変化した経験について書きなさい。全体を二〜三文程度にまとめること。

今回は、みなさんと同じ中学生が主人公の小説を読んで、主人公と似た自分の経験について述べるというお題だった。
友達や家族とのやりとりなど、これまでのさまざまな経験を思い出した人も多かったのではないかと思う。
それではZ会に届いた回答から、目を引いたものを紹介していこう。

今回の回答選

C#11さん

私は今まで心配性で失敗を恐れていた。しかし、あるスポーツ選手の本で「失敗したらガッツポーズ。失敗も本気なら成長するチャンス」という言葉を読んでからは、物事をポジティブに捉え、挑戦してみようと思えるようになった。

 

最初に紹介するのは、失敗を恐れる気持ちを変えてくれたスポーツ選手の言葉を取り上げたC#11さんの回答。「失敗も本気なら」というところに、スポーツ選手らしい真摯な姿勢が感じられ、この言葉を選んだC#11さんに共感できた。何か新しいことに取り組もうとする人の背中を押してくれる言葉だと思う。

O.M.さん

私は、学校でちゃんと考えて行動したことを先生に注意されたりしたとき、自分にとって腑に落ちないと素直に従ったりすることができずに、「なんで?私はこうするためにこうしたのになんで理解してくれないの??」と反抗してしまいます。そんなときに姉が「なぜ、相手がそんな風に言ってきたのか思いつく限り考えてみて、それでも自分が正しいと思ったらそのままでいい。」と、言ってくれました。自分の行動を改めることもできて自分の考えも否定することがない、いい方法だなと思いました。

 

次に紹介するのは、お姉さんからもらった言葉を紹介してくれたO.M.さんの回答。立場を相手のほうに変えて考えてみることと、自分の考えを大事にすることの両立について教えてくれる、すばらしいアドバイスだと思う。最後の一文から、O.M.さんがこの言葉に深く納得していることがうかがえる。

あゆコロちゃんさん

私は部長になったとき、どうして自分だけがこんなに常に緊張しなければならないのか、と思っていたときがありました。しかし、テレビである船長さんが「船長が緊張しなくなったら、その船は危険なんだよ。」と言っているのを聞いて、そんな自分を恥ずかしく思いました。部長である私は、いつどんなことにも対応できるように常に緊張していなければならない、しかしそれは当たり前のことでありながら最も大切なことであると気付くことができました。私はこの言葉を胸に、今日も部長として部活動に励んでいます!!

 

テレビで聞いた言葉に示唆を受けた経験を取り上げてくれたのは、あゆコロちゃんさん。自分に直接向けられたものでなくても、ふと耳にした言葉に刺激を受けたり、励まされたりした経験をもつ人もいるのではないだろうか。そんな言葉をキャッチした瞬間の心の動きが感じられる回答である。

ぽんかんさん

私は今書道を習っているのですが、小6の時に1度中断して中学生になってから再開しました。再開したばかりの頃は感覚をうまく取り戻せず、なかなか級も上がらなくて自棄になっていた時、先生に「感情が字に出てるよ。一文字一文字を丁寧に書かないと。」と言われました。その言葉で私は「書道には速さや書いた枚数の数なんて関係ない。一枚をどれだけ美しく仕上げることができるかだ。」と気がつくことができました。

 

書道の先生のするどい指摘を取り上げてくれたのは、ぽんかんさん。「感情が字に出ている」というのは、たくさんの生徒を見てきた経験豊富な先生にしかできない指摘であろう。先生の言葉を自分なりに消化して、気づいたことをくわしく述べてくれた点もすばらしい。

C.S.さん

私は、漫画を描くことが好きで、一時期本気で漫画家になろうと思っていましたが、恥ずかしくて人には見せていませんでした。ある日隣の席の男の子が、「漫画見せて」と言い、私は嫌だ、と言いました。すると彼は「漫画って人に見せるものだろう。自己満足で夢は叶えられないよ!」と叫んだのです。彼の言葉は、恥ずかしがっていた私を変えてくれたものとして、今でも心に残っています。

 

友達からもらった言葉を取り上げてくれた回答からも紹介しよう。C.S.さんが紹介してくれた言葉は、何かになりたいなどの夢をもつ人なら、誰しもはっとさせられるのではないだろうか。夢を叶えるには、それがどんなものでも一歩踏み出す勇気が必要なことを教えてくれる言葉である。

リーナ&リオラさん

私は、ずっと自分が大嫌いで後ろ向きだ、ということを友達に打ち明けた。彼は同情するだろうと思ったが、彼からもらった返事の手紙に、「君はたくさんの本を読んでいる。だからもっと楽しい言葉や明るくて前向きな言葉を知っているだろう?」「本当に孤独なのか?もう一度考えてみろ。」と書いてあるのを見たとき、彼に叱られて、同時に励まされた気がした。とても驚いたが、とても嬉しかった。今でも、その言葉は私の力になっている。

 

最後に、友達の言葉を取り上げてくれた回答からもう一つ。リーナ&リオラさんの友達がかけてくれた言葉は、気づいていなかった自分自身の姿を指摘してくれたものだと思う。大切なものは自分自身の中にあるのにそれに気づかず、マイナスの感情にとらわれているのを救ってくれたすばらしい言葉だ。こんな友達がいれば、人生は何倍も豊かなものになるに違いない。

Z会のつぶやき

 

今回の読解演習の文章は、鷹匠を夢見る中学生を主人公とした小説だった。主人公の理央にとって平橋さんは鷹匠の先輩であり、理央は平橋さんの言葉を素直に受け取ってモコへの接し方を変えていく。平橋さんの言葉はあくまで自分の経験から発せられたものだが、理央はそれを自分とモコとの関係にあてはめて、自身の態度や考えを振り返っている。
中学生のみなさんにとって、他者の言葉が自分の心に響くのはどんなときだろうか。直接的なアドバイスを求めているときはもちろん、何かに悩んだり迷ったりしているとき、ふと耳にした言葉にはっとさせられ、意識が変わることもあるのではないかと思う。今回はそんな言葉をとらえて紹介してもらうという課題だった。回答を見ていると、みなさんが日々、前向きに生きていること、成長しようとしていることが読み取れて、胸が熱くなってきた。この1年近くの皆さんの成長も感じられて、この課題を出して本当によかったと思う。